お芝居をはじめるにあたってかなり大事になってくるものがあります。
よく言われることですがお芝居には感情が必要になってきます。
感情というものはかなり繊細です。演技をするうえで感情がない場合、役(キャラクター)の言っていることや行動に説得力が無くなってしまいます。
その場合観客の共感をよべません。
共感が呼べないということはお客さんが感動できないということになってしまいます。
お客さんからみて、「嘘くさいなあ」「説得力がないなあ」という印象をあたえてしまいます。
ちなみにロボットや人形や機械を演じる場合はまた別の方法をもちいなければいけません。
設定によりますが、いかに人間らしい癖や仕草を消していくことから始まります。
またはファンタジー設定の役(キャラクター)を演じる場合、つまり人間以外を演じる場合もまた人間らしくない部分をつくらなければいけません。
ロールプレイングでいう神様、魔物、精霊、幽霊などがこちらに該当します。
こちらは人間とは少し異なる価値観を表現する必要があります。
今回は人間を演じるうえで大事な感情やメンタルを中心に考えていきたいと思います。
大事なものは感情量
お芝居や演技において感情はとても大事なものになってきます。
舞台でいえばいくら素晴らしい演出がついたり照明や音響がすごくても演技の内容がすかすかだった場合あまり面白い舞台にはなりません。
この演技の内容がすかすかになる原因というのが感情が無い、感情がまちがっている、感情量が少ないということになってきます。
かなり大きな部分をしめる部分ですので、しっかりと考えなければいけないところではあります。
「抑揚が無い」というダメ出しと感情について
舞台をやる場というのは劇団だけではなく高校演劇や学芸会などもあげられます。
演出家さんが役者側になおしてほしいところを指摘していくことをダメ出しといいます。
よく高校演劇で言われていることとして「抑揚が無いから抑揚をつけて」というダメ出しをよく聞きます。
この場合は役者は抑揚をつければいいと思って抑揚をつけてお芝居します。
これではお芝居として成立しない場合は多いです。
なぜならただ抑揚をつけるだけでは上辺を取り繕っているのと変わらないのです。
これを正確に言うと音の高低差でお芝居をしているということです。
「台詞を歌っているというダメ出し」を受ける人はこちらに該当します。
生の感情があるわけではありません。
ただ音の高低差でお芝居をしても演技として成立する場合があります。
声優さんなどでキャリアとかなりのスキルをもっている人ならば仮に感情がなくても成立します。
しかし基本的には感情やメンタルありきでお芝居をするということを覚えていただけたらと思います。
感情が無い演技をした場合は言葉に力と意志がこもらないうえに、台詞を聞いたら不思議と台詞が頭にはいってこないのです。
感情量の高い演者の台詞はしっかりと耳にはいってくるのです。
歌手と呼ばれる人達は収録の際に歌にかなりの感情量をこめます。
ライブと違って録音された音声だと多少劣化してしまうからです。
多くの感情をこめて歌うことによって録音された音に多の人の感動と共感が生まれるのです。
台詞に抑揚をつけるというダメ出しの本当の意味とは?
人間の感情やメンタルはとても複雑で意識してコントロールがききません。
しかも感情というものは決して単一のものではありません。
人間のメンタルは常に複数の感情を含んでいるのです。それが時間の経過とともにコロコロ変わったりします。
例えばかなりどうしようもないくらい悲しいことがあって悲嘆にくれたとしても、ふとした瞬間にお腹すいたなあとか考えていたりするのです。
どんなに怒っていても怒りすぎて笑ってしまう場合もあるのです。
それが人間なんです。
様々な感情が出ている状態で台詞を言うと勝手に抑揚はついてきます。
これが抑揚をつけるということです。
役(キャラクター)1つの台詞に様々な感情や意味が含まれているのです。
こういった細かいことを追求してお芝居をすると役(キャラクター)が深くなってきます。
キャラクターの人間味が溢れるとお客さんはその役(キャラクター)が言っていることや行動に説得力をもちます。
より共感を得られやすくなるのです。
ちなみに抑揚が無くて棒読みでもお芝居は成立したりします。
しかし音の高低差を使えないために凄まじい感情量が必要なのです。
感情は出すものではない
感情がかなり大事なものかはわかった。
じゃあ感情を出せばいいんだ!感情出ろ!と念じて演技したところで感情はでません。
むしろ感情は出てこなくなり、感情を出しているつもりだけど全然でていない、自分ではできているつもり。
というような最悪変な癖までついてしまう場合があります。
逆に力まないほうが感情はでてきたりします。
感情はコントロールしようとすると逆にコントロールできなくなります。
そもそも劇中の役(キャラクター)は感情でろ!感情でろー!とかそんな余計なことを考えてはおりません。
感情は出すものではなく自然とにじみ溢れてくるものです。
感情が出てきやすくするためには、全ての人に当てはまりはしませんが、コツがあるのでいくつか紹介します。
演技をしている最中は何も考えない。
「演技している時にどんなことを考えるの?」と聞かれる場合がありますが何も考えてません。
基本的に演じる前はたくさん考えていることが前提となります。
他のブログでやり方として紹介していますが役の履歴書を書いたり、脚本やキャラクターの心情を読解したり、相手役と色々ディスカッションしたりと考えることはとてもたくさんあります。
そして台詞や段取りを自分の中に落とし込む。
考えるだけ考えたら演じる最中は何も考えずに役(キャラクター)を生きることに集中することです。
その役(キャラクター)になったら自分ではないのです。
舞台上で生きているはずの役(キャラクター)が「あの台詞なんだっけ?」とかそんなことは思わないのです。
余計な思考をすると感情が出にくくなるので極力考えないようにすることが大切です。
感情がにじみ出るようになってくると演じることが心の底から楽しくなります。
99パーセントのキャラクターの中に1パーセントの自分をもつ
これは僕がよく言われたことではあります。
演じることは自分とは違う他人の人生を生きることである。
そうは言っても100パーセント役に集中すればいいのかというとそうではなく、冷静な思考力をもつ自分もいなければいけないのです。
舞台で言うと様々なきっかけというものがあります。
照明にもあたらなければいけないし、音響のきっかけも必ず守らなけれいけません。
自分もしくは相手が台詞を忘れた場合、舞台セットが壊れるというトラブルが起こった場合なども冷静な自分が必要になってきます。
いくら舞台上では普段の自分ではいてはいけないとしても、そうじゃないと対処できないからです。
だからよく言われることが99パーセントはキャラクターに1パーセントは冷静な思考力でという言葉が言われます。
冷静すぎて感情がこもってないのはいけないですが、コントロールができない感情量は色々と弊害が発生するということを覚えてください。
相手の話を聞く、相手の表情をみる。
相手役の声を聞いたり、表情をしっかりみる。
実は共演者がかなりうまい人だとこういったことをするだけでお芝居がやりやすくなる場合があります。
上手い人は相手がお芝居をやりやすくするために演技をしてくれたりします。
うまい人と共演すると成長しやすいというのがこういった構造だったりします。
意識を自分ではなく相手にむけるということは演技をするうえでとても重要ではあります。
お芝居をはじめて間もない人は意識が自分にむきがちになるので、それを防ぐという意味でも共演者、相手役のお芝居をしっかりとみるということはやっておいたほうがいいのです。
感覚的に良かったときの演技をなぞろうとしない。
運動能力と違い、演技におけるパラメーターというものは数値化しにくいのです。
しかし自分の感覚的にすごくいいお芝居ができた日も時にはあるかもしれません。
今日の自分気持ちがのっているという状態です。
その時はとても嬉しいのですが、ここで1つ注意しなければいけないことがあります。
演劇は同じ演目を何回も行います。多い時には1ヶ月以上公演することがあります。
稽古も含めると何回も同じシーンを演じることがあります。
自分の中で新鮮さがどんどん無くなってしまうのです。
つまりある種の作業や段取りをおこなう危険性をはらんでおります。
段取り芝居だと人を感動させることはできないのです。(もちろん成立する場合もありますがここでは省きます。)
僕もどんなに気を付けていても段取りになる場合もあります。
例えばドアを空けて部屋にはいるシーンがあるならば毎回新鮮な気持ちをもって演じるということをしなければいけません。
そして繰り返しのシーンの中にも新しい発見や違った感情の流れを見出すことができるはずです。
毎回新しい感情や発見をみつけるつもりで演じることができたら慣れて段取り芝居になることも解消しやすいのではないかと思います。
その日のコンディションによっては感情が出ない時がある
その日その日のコンディションによって感情がのらないということがあります。
原因がよくわからないけれども、人間のメンタルはとても複雑なのでそういう日だってあるのです。
ミスをした、台詞をとちってしまったことをひきづってしまったり、
ウオーミングアップがあまりできなかったなどなど色々あります。
そういう時は焦らないことです。焦って取り返そうとしたら余計に力んでこんがらがってきます。
感情がのってこない原因に力がはいってることもあります。
色々とまずいことがあっても力まない、焦らない心というのが大切になってきます。
普段から自分の感情を知覚しておく
日常的に自分の心の状態を把握することはお芝居をするうえでとても大切なことです。
人によって感情が動いているときの状態は様々です。
自分が普段からイライラすることや嬉しくなった状態を覚えておきましょう。
悲しい時にはどうなるのか?楽しい時にはどういう心の状態になるかを把握する。
これがお芝居をするときの引き出しになります。
引き出しの多い人というのは普段からこういうことを心がけています。
まとめ
今回はお芝居における感情を焦点にあててみました。
他にも方法はありますが、これらが演技をすることおいて、感情を出すヒントになります。
ある一定以上の感情量が無いとお芝居においてどうしても嘘くさくなってしまいます。
感情はかなり大事なファクターを占める要素なのでお芝居初心者の方はしっかり考える必要があります。
僕も感情を出すという感覚はよくわかりませんでしたが、お芝居中あることをきっかけに感情が溢れ出すようになりました。
苦手意識のある人もいらっしゃるかもしれませんが、感情は必ず出てくるようになります。
最初の難関かもしれませんが必ずできるようになるので、コツコツ訓練していってください。